「メジャーリーグの会」発足
今回の「ハムレット」は、僕の最初の台本上演である。
ずっと思ってきたのは、プロデューサーが演出や創作に手を染めてはいけないということだ。例えば、僕が誰かほかのプロデューサーが演出や台本を書くということを始めたら、そのプロデューサーのことはあまり信用しないだろう。
自分のプロデューサーとしての権限を利用して、演出をしたり、自分の書いた台本を採用したのだと思われるからだ。
蜷川さんは、「笹部、絶対に実作者になるなよ」ときつく忠告していた。
だから初演の安寿ミラ「ハムレット」の時は、クレジットに自分の名前を出さなかった。
「モンテ・クリスト伯」の時も、そうだった。
はっきりとクレジットしたのは、大地真央「トスカ」の時である。
これは僕がプロデューサーではなかったし、出演者の大地さんも、演出の栗山さんも本の面白さを認めて、出演し、演出してくれたからである。
ある時から、僕はかつての名作を自分なりの解釈で、新たに書き直すという作業を始めた。
昔は、自分がやりたい芝居は企画書として書いていたのだけれど、それがエスカレートして、自分のイメージで、それらの本を再現してみたくなったのだ。
その殆どが、演劇史上の話題作で、ヒット作である。
例えば、「トスカ」は伝説の女優サラ・ベルナールによって初演され、それからオペラになった。元々の台本は100人からの登場人物でなりたった舞台である。
僕はそれを6人の登場人物で出来るように書き直した。
そのように、この2年間に、50本くらいの台本を作った。
自分が読んでもとにかく面白いとしかいいようがない。
僕がオリジナルで考えたことは、殆どない。原作がただただ面白いのだ。僕はその面白さをなるべく、忠実に再現しようと思っただけである。
より正確に言えば、作家がイメージしたことを、自分のイメージで再現してみたのだ。
僕は作家ではないから、オリジナルに物語を作り出す才能はまったくない。
ただ作家が目指した到達点が、なんとなく見えるように思えるのだ。
そして自分が見えたとおりに、書き出してみたら、そうなったというのが、僕の台本である。
2007年は、「ハムレット」「カスパー」「シラノ・ド・ベルジュラック」「野鴨」というまさに脈絡のない、おそらく演劇史上の名作を、僕自身の上演台本で上演する。
その評価は、観客が決めてくれるだろう。
原作は本当に素晴らしい。
僕はそれらの本が、その中にあるものが、どんなに素晴らしいかを、実証し、実現したいと思っただけである。
これまでメジャーリーグの舞台は、すべて僕の企画で、頭の中にあったことである。
僕という人間が考えなければ、この世に存在しなかったものばかりである。
そして、これからは、メジャーリーグの舞台は、すべて僕が書いた台本をやっていこうと思っている。
というわけで、「メジャーリーグの会」というのを立ち上げて、僕自身のコンセプトを支持してくださる観客を作ろうと思っている。
消えてなくなるか、大きく発展していくのかはやぶさかではないが、まあ、近いうちに結果は出るだろう。
観客に支持されないものを長く続けるつもりはない。
いいものか、悪いものかは、自分ではよくわかっているつもりだけれど、自分が判断すべきではないと思っている。
演劇は観客のいないところには成り立たないものである。
僕は「お客は入らないけれど、いい芝居なんだ」というふうには言いたくはない。
なかなかそうはいかないけれど、僕はなによりも、お客の入る芝居を作りたいのだ。
いい芝居を作りたいのではなくて、お客が愛してくれる芝居を、作りたいのだ。
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